photo: mamoru ishiguro
木造平屋の動物病院です。一般的に動物病院の診察室は、診察中の動物が診察台から逃げ出しても捕獲しやすくするため、コンパクトなサイズが好ましく、小さな個室が並んだ平面計画になる傾向があります。
一方、病院の診察室は建築基準法上の「居室」になります。木造建築では排煙免除の緩和措置を施すことはでないため、採光と排煙のための窓を設けることが必須になります。
敷地は傾斜地の切土によって造られた間口の広い不整形な形状です。道路沿いに駐車スペースを設けて建物を奥に配置し、敷地形状に合わせて扁平な「への字」型の平面としました。
診察室・トリミング室・便所・風除室をコンパクトな個室とし、動物病院が求める用途に沿ってずらしながら配置しました。敷地の間口の広さを生かすように幅をとって配置したため、個室の一部は「への字」の平面からはみ出しています。
建物正面のファサードには大きなガラスを嵌め込み、分散した個室の有り様を強調して間口の広い外観をつくりました。またガラス越しに外部から院内の様子が分かるようにすることで、地域に開かれた動物病院になることを目指しました。
建物の中央に居室を配した本計画では外壁に窓を設けることができないため、筒状の吹抜けを大屋根の上に分散して配置し、居室の上部にハイサイドライトを設けて採光と排煙義務をクリアしています。
コンパクトに並ぶ個室群の上に吹抜けを重ね合わせ、飼い主さまが寛ぐ待合スペースにも印象的な光が落ちるように配慮しました。個室が雁行して連続する平面的な空間と、光に満たされた垂直方向の吹抜けが立体的に交わり、変化に富んだ豊かな医院空間をつくっています。
日本空間デザイン賞2023 Longlist 入選