photo: mamoru ishiguro
静岡県湖西市に建つ木造2階建ての住宅です。広い敷地の東側にはご両親が住む木造平屋の母屋が建っており、使われていなかった敷地の西側に建主夫婦のための住宅を計画しました。
敷地は十分な広さがありますが、建物を計画する場所は西側が狭く先細りする不整形な形状でした。そこで住空間を帯状のスペースに分け、敷地形状に合わせて立体的に並列配置しました。大小さまざまな空間がずれながら繋がるため、内外の空間が様々に連続する多様な住空間をつくっています。また敷地の北側にある私道を活用して、敷地内を車が通り抜けできる配置計画とし、車の切り返しを不要にしました。車が通り抜けるトンネル状のスペースは屋根付きの駐車場となり、雨に濡れずに玄関へアプローチできるようになっています。
2階のリビングは南方向へ大きく開かれた、遠景を見通せる開放的な空間としました。ダイニングスペースは南北2か所のテラスに面する半屋外的なインナーテラスであり、帯状に並列した空間を横断しています。サンルームもリビング同様の南向きの大開口とし、浴室もサンルーム越しに外部に開かれる空間としました。サンルームは共働きのご夫婦が天候を気にせずに洗濯物を干せるスペースであり、水まわり空間全体を乾燥させる日当たりの良いドライルームになっています。
外部に開かれた開放的な2階とは対照的に、1階の寝室は中庭を介して向かい合う、私的で落ち着きのある空間となっています。家族生活の変化に合わせて自由に使えるようにするため、ひとつながりの細長い空間をカーテンで柔らかく仕切っています。
また夫婦それぞれの趣味のための充実した個室を設けています。1階のスタジオはご主人の趣味の楽器演奏や音楽鑑賞のための場所であり、半地下空間にして防音と音響機能を高めています。屋外の駐車場が緩衝帯となり、深夜でも大音量が寝室に届かないようになっています。2階の書斎は奥様のための場所であり、沢山の本や、趣味で集めた雑貨が陳列できるショーケースのような空間です。食品庫を介してキッチンともつながっていて、使い勝手の良い家事スペースになっています。
外装は屋根・壁・軒裏とも鋼板瓦棒葺きとし、古い工場が隣接する周辺の環境に外観デザインを近づけ、シルバーの直方体の組み合わせによってコンテナのような即物的な存在感を持たせた外観になっています。
2018年 第50回中部建築賞受賞