小畷の家

美しい和風庭園の中に佇む木造２階建ての住宅です。広い敷地の中にはもともと数寄屋造りの雰囲気の良い母屋が建っており、その母屋の隣に新たな住宅をつくる計画でした。

母屋と庭園との調和を図るため、建物の屋根を切妻形状とし、幅や高さが異なる３つの山型空間を母屋と平行に配置しました。広い敷地の中に新たな３つの切妻屋根が加わることで、敷地全体がより美しく整えられ、静けさや自然との調和が感じられる風景になればと考えました。

３つの山型空間は筒状の細長い空間になっていて、それぞれの空間の用途に合わせて山型の幅と高さ、奥行きを決めています。

中央の山型空間は、主な生活の場となるリビングと寝室であり、最も幅の広い空間です。リビングは庭園の方向に開かれ、手入れの行き届いた美しい和風庭園を眺めることができます。奥の寝室との間には光を取り入れるための小さな中庭があって、プライベートな屋外空間をつくっています。

２階建ての山型空間は、浴室などの水回りと個室のある空間です。中庭に面する吹抜け部分は日当たりの良いサンルームであり、ベンチを置いてくつろげるほどの広さがあります。１階奥の洗面室はサンルームに面していて、自然光に満たされた明るく清潔感のある水回りになっています。個室のある２階はガラスの間仕切りとし、空間の広がりが感じられるようにしています。また２階の大きな開口部からは、母屋まで連なる切妻屋根が美しく見え、屋根越しに遠方の風景を見渡すことができます。

母屋側の幅の狭い山型空間には、エントランス、収納、トイレ等がコンパクトに収められています。各個室の三角形の欄間部分はOPENになっていて、筒状の山型空間の奥行きが感じられるように配慮しています。

これらの３つの山型空間を廊下状の移動空間を挟んで連結し、中央の中庭を中心として回遊できる動線計画としました。大きさや明るさなど、スケールの異なる３つの山型空間を行き来し、場面ごとに変化する空間を楽しめるようにすることで、日々の生活がより豊かに感じられるようになればと考えました。