蒲郡の家

photo: mamoru ishiguro

蒲郡の丘陵地に建つ木造2階建ての住宅です。敷地は南に向けて緩やかな傾斜がある不整形な形状であり、北・西・東側は豊かな樹木が繁る法面に囲われています。

建主さまの仕事柄、広い駐車場をつくることが求められたため、建物の形状を末広型の台形にして敷地の北側に寄せて配置し、南側に駐車場と庭を最大限に確保しました。1・2階とも南庭へ連続する大きな開口部を設けていて、庭に面した建物の正面性を強調した外観となっています。正面以外は鋼板仕上げの閉鎖的な外壁とし、法面の樹木を切り取って眺めるための開口部を適宜設けています。

内部空間は階段を中心とした放射状のプランとし、2つの吹抜けにより上下階を立体的に繋ぐようにしました。引戸やガラスにより空間を緩やかに仕切ることで、なるべく家全体が一体的に感じられるようにして、大人数の家族が広い空間の中で何処にいてもお互いの気配が伝わるようにしました。

大きな切妻屋根の下のワンルーム空間ですが、2つの吹抜けと回遊性を持たせた放射状プランにより、場所によって天井の有り様が多様に変化する、豊かな空間をつくりだしています。

最上階の屋根の一部には屋上テラスを設け、遠方の海を望める場所としました。ここは建主さまからのご要望でもあった法面上の歩道の桜並木に面する場所であり、海上で行われる夏の花火大会を眺める場所にもなっています。

〜 大空間を快適に保つための空調計画 〜

冬場は薪ストーブを主に活用した暖房計画としています。
建物の対角線上にある二つの吹抜けの間に薪ストーブを設け、薪ストーブの暖気が2方向に分かれて上昇するようにして、気積の大きい空間を効率的に暖めるようにしました。空気の不快な対流を低減させるため、吹抜けの一つにはシーリングファンを設けています。
また南面する1階床をコンクリート下地のタイル仕上げとすることで、薪ストーブの熱と昼間の日射熱を蓄熱できるようにした。

一方夏場は、敷地が風がよく抜ける丘陵地であるため、主に通風により涼を得るようにしました。深い軒で直射光を遮り、大きな気積を活かして熱気を上部に逃がせるようにすることで、なるべくエアコンに頼らずに快適に過ごせるよう配慮しました。

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