多米の家

photo: mamoru ishiguro

豊橋市の郊外に建つ木造2階建ての2世帯住宅です。敷地の南側は市街化調整区域の水田や畑が広がり、広大で豊かな自然に面しています。また敷地の北側は住宅地のゆったりとした街並みに面し、河川の緑地や遠くの山並を望むことができます。

1階を親世帯、2階を子世帯の住まいとすることが与条件でしたが、敷地は第1種低層住居専用地域で面積も十分ではなく、限られた広さの中に2世帯の家族が快適に暮らせる住空間を如何につくるかが問われる計画でした。

1・2階ともに、主な生活の場となるリビングを最大限に広くとり、天井を高くして南北に大きな開口を設け、豊かな外部環境に開かれた開放的な場所としました。また寝室や水廻りとなる個室群をリビングの西側に沿ってコンパクトにまとめ、それぞれの場所がリビングにダイレクトにつながるようにしました。建物東側に並ぶ構造壁の間には棚板を設け、リビングに面する長大な収納にしました。棚板は建主さまのDIYによって自由に設えられていて、様々な趣味のモノが飾られて生活空間に彩りを与えるスペースになっています。

2階の個室空間は、床面積に算入されないロフトと床下収納を設けてオープンで多目的に使える場所としました。狭いスペースの中でもストレスを感じることなく楽しく生活できるように、起伏のある床を立体的に構成しました。ロフトの床厚も棚板と同じになるように薄くし、リビングから見える床板の立体的な構成が軽やかに見えるように配慮しました。

1階には親夫婦それぞれの個室があり、クローゼットを介して2室がつながるように配置しました。リビングに面する玄関は店舗のファサードのように前面道路に対して広く開き、空間の広がりと奥行きが感じられるように配慮しました。家の構えを街に対してオープンに開くことで、近隣とのつながりが親密になることも期待しました。

以上のような「外部とつながる開放的なリビング」、「コンパクトで機能的な個室群」、「生活を彩る壁収納」、これら3種の空間が並列する帯状の3層構成をつくり、それらの場所を自在に行き来できるようにすることで、2世帯の家族が日々の生活を楽しみながら、快適に暮らせる住空間をつくろうと考えました。

2017年 第49回中部建築賞 入選
2021年 第8回JIA東海住宅建築賞 大賞
2022年 新建築住宅特集5月号 掲載


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